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エッセイ「本だけ眺めて暮らしたい」【382】|MK新聞連載記事

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MKタクシーの車載広報誌であるMK新聞では、大西信夫さんによる様々な身近な事柄を取り上げたエッセイ「本だけ眺めてくらしたい」を前身を含めて1988年5月22日から連載しています。
MK新聞2020年2月1日号の掲載記事です。

本だけ眺めてくらしたい

私は、映画『エイリアン』(1979)が大好きである。
何度も何度も何度も観ている。今後もことあるごとに観るだろう。
大部な関連書籍を何冊も購入し(例えば『メイキング・オブ・エイリアン』玄光社、2019年刊、税別6,000円!)、製作裏話や監督ほかスタッフ、キャストのインタヴューなどを読んだり、スチール写真や設定資料を眺めたりしている。
ただし、続編の2、3、4、スピンオフは含まない。オリジナルのみ。
そして、同じリドリー・スコット監督が三十年以上経て撮った続編『プロメテウス』(2012)、『エイリアン・コヴェナント』(2017)もお気に入りだ。
『スター・ウォーズ』(1977~)シリーズはあまり好みではない。もっとも、中学の頃、日本公開前から注目し(丸善の輸入雑誌売り場で情報をチェックしていた)、封切りされるやいなや映画館で観た第一作のエピソード4は当時、確かに夢中になったが。
まるで時代劇かファンタジー童話のような『スター・ウォーズ』は、さすがに高校から大学にあがる頃にはもうつまらなくなったが、『エイリアン』はむしろ歳をとるにつれ、不思議に惹かれるようになった。
それはともかく、現実においても、地球外に知的生命体、生き物は存在しているのだろうか。
人類の誕生は天文学的、生物学的、その他無数の偶然が重なった奇跡だと言われる一方で、宇宙には地球と同様の環境の天体が無数にあると推測され、「地球外生命は存在しない」とは考えにくいと言われたりする。
しかし私は、もしかしたら、人類が誕生したのは本当の本当に奇跡なのであって、知的生命体が存在しているのは、果てしない広大な宇宙にポツンとこの地球だけではないのかと想像する。
この場合の「奇跡」はロマンチックな意味で言っているのではなく、センチメンタルに孤独と言っているのでも、私たちは特別な存在なんだと自意識過剰に言っているのでもない。
単に現実として、そうなのだ。何の意味もない事象として、地球にだけ私たちがいる。無限のうちの一例。むしろ奇跡でもなんでもない。
そんなふうに考える私だが、『エイリアン』にはリアリティを感じる。虚構内リアリティとは、現実そっくりかどうか、あるいは、現実にあり得るかどうかを問うものではないということだ。

MK新聞について

「MK新聞」は月1回発行で、京都をはじめMKタクシーが走る各地の情報を発信する情報紙です。
MK観光ドライバーによる京都の観光情報、旬の映画や隠れた名店のご紹介、 楽しい読み物から教養になる連載の数々、運輸行政に対するMKの主張などが凝縮されています。
40年以上も発行を続けるMK新聞を、皆さま、どうぞよろしくお願いします。

ホームページからも最新号、バックナンバーを閲覧可能です。

MK新聞への大西信夫さんの連載記事

1988年以来、MK新聞に各種記事を連載中です。

1988年5月22日号~1991年11月22日号 「よしゆきの京都の見方」(45回連載)
1990年1月7日号~1992年2月7日 「空車中のひとりごと」(12回連載)
1995年1月22日号~1999年12月1日号 「何を見ても何かを思う」(64回連載)
1996年4月16日号~現在 「本だけ眺めて暮らしたい」(連載中)

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