北野天満宮に咲く日本唯一の品種である遅咲き桜の「北野桜」とは
北野天満宮といえば、いわずと知れた梅の名所です。
しかし、菅原道真公の生きていたころは、北野一帯は桜の名所として有名でした。
今も梅よりははるかに少ないものの桜もあり、桜が散るころに咲きはじめます。
社務所前の御神木「北野桜」が2016年に新品種と判明するなど、桜の話題にも事欠きません。北野桜はカスミザクラ系の品種なので、かなり遅咲きです
北野天満宮の桜
4月上旬に枝垂桜とヤマザクラが開花
北野天満宮の梅は、例年2月末から3月上旬に見頃を迎えます。
梅苑が開苑され、多くの人で賑わいます。
3月下旬には、梅苑も閉苑となりますが、引き続き境内各所で遅咲きの梅が咲きます。
そんな中、数は少ないものの、桜も咲き始めます。
連歌所の井戸の横には、枝垂桜が咲きます。
まだそれほど大きくはありませんが、これからの成長が楽しみです。
右の建物には三つの摂社があり、そのうちの一つは豊国社です。
北野の大茶会など北野天満宮にはゆかりの深い秀吉ですが、ここで祀られているとは知りませんでした。
枝垂桜だけでなく、ヤマザクラも境内のところどころに咲いています。
緑や赤など色とりどりの新芽が美しい桜です。
北野桜はまだつぼみが小さく、まだ時間がかかりそうです。
ソメイヨシノは見かけませんが、境内各所をヤマザクラが彩ります。
4月中旬に主役の「北野桜」が開花
北野桜は、社務所前に咲きます。
まだほとんどがつぼみですが、よく探すとほんの一部だけ開花していました。
まだつぼみが膨らみかけている段階ですが、一部はちらほら開花しています。
真っ白な花を咲かせています。
咲きはじめはこのような純白をしています。
花びらの一部がうっすらピンクがかっています。
開花時はほぼ白色ですが、次第に赤みがまし、ピンク色が濃くなるのが北野桜の特徴です。
可憐な花を咲かせます。
北野天満宮にしかない「北野桜」とは
カスミザクラ系の北野桜
北野桜は、社務所前で古くからある一重で中輪の桜です。
樹齢は120年で御神木として、これまで大切にされてきました。
実は北野桜が新品種に認定されたのは、2016年と最近のことです。
桜の園芸品種にはいろいろありますが、北野桜はカスミザクラ(霞桜)系の園芸品種です。
後述のとおり、カスミザクラ自体は日本の山野に普通に自生している桜です。
120年前に、開花につれて色が変わるカスミザクラが偶然発見され、珍しい桜として北野天満宮に奉納されたのでしょう。
接ぎ木などで増えるソメイヨシノを代表とする桜の園芸品種と異なり、野生種であるカスミザクラは種で増えます。
個体によって異なる遺伝子を持っているため、個体によって特徴が微妙に異なります。
その中でも観賞的に価値がある特徴を持った個体は、「○○桜」などと呼ばれるようになります。
2016年に新品種と判明
2016年の北野天満宮と住友林業の調査で判明したことは、北野桜が観賞価値がある特徴を持つことに加え、住友林業が持つ既知のカスミザクラとは異なる遺伝子を持っていたということです。
もちろん、住友林業が全国全てのカスミザクラの遺伝子データを持っているわけではないので、同じ桜は存在しないと断定はできません。
少なくとも著名な桜の中では同一の桜はないということです。
遺伝子という点だけに着目すると、全ての野生の桜は異なる遺伝子を持っています。一本一本が日本で唯一の存在です。
しかし、それらが新品種と言われるかどうかは、観賞価値が高いかどうかという点が重要です。
なお、2021年時点で北野桜は農林水産省への品種登録は行われていません。
品種登録制度は、新品種作成者の権利を保護することを目的とした制度です。
登録されなければ新品種に認定されないというものではありません。
公的な機関から北野桜が新品種として「認定」を受けたわけではありません。
カスミザクラとは
北野桜の元となったカスミザクラ(霞桜)は、日本に広く自生している桜の野生種のひとつです。
ケヤマザクラ(毛山桜)ともいわれます。
同じく日本の山野に自生しているヤマザクラ(山桜)よりも、やや標高が高い位置に分布していますが、混生していることもよくあります。
開花は桜の中では遅めで、関西では4月中旬から下旬にかけて見頃を迎えます。
ヤマザクラよりも遅いのも見分けるポイントのひとつです。
カスミザクラはヤマザクラと同じく、花と同時に若葉が出ます。
若葉の色には多少の幅はありますが、赤や茶、緑など色とりどりの若葉が出るヤマザクラと比べると、緑の若葉が多いのがカスミザクラの特徴です。
カスミザクラ系の園芸品種は、それほど多くはありません。
奈良の八重桜(ナラノヤエザクラ)や笹部桜(ササベザクラ)などが比較的知られています。
北野桜のこれから
2016年には、住友林業が北野桜のクローンの増殖に成功しました。
北野桜の樹齢は120年で、衰えも見えてきたため、万一に備えて後継樹を育てることが目的です。
桜の園芸品種は、通常は接ぎ木によって増やします。
しかし、桜は老樹となると接ぎ木が難しくなるため、近年ではクローン技術が導入されるようになりました。
住友林業といえば、醍醐寺三宝院で「太閤しだれ桜」のクローン増殖に成功したことで知られます。
カスミザクラは、樹齢100年を超える個体も珍しくない長寿の樹です。
北野桜は多くの人が行き交う社務所前にあります。場所柄、通行を制限することも困難です。
根の周りを踏み固められることを嫌う桜にとって、決して成育環境が良いとは言えません。
しかし、万一の場合も後継の樹が育っているというのは安心です。
いつまでもこの美しい北野桜が見られればうれしいですね。
北野天満宮の情報
「学問の神様」として信仰されてきた菅原道真公をおまつりしている神社です。
藤原氏の陰謀により左遷され、失意のうちになくなった道真公の霊を慰めるため、947年に創建されました。
道真公は、梅をこよなく愛したといわれ、境内にはたくさんの梅が植えられています。
道真公の命日にちなんで毎月25日は「天神さん」の縁日がひらかれ、大変にぎわいます。
拝観情報
拝観時間 | 5:30~17:30(10~3月) 5:00~18:00(4~9月) |
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拝観料 | 境内自由 |
TEL | 075-461-0005 |
住所 | 京都市上京区馬喰町 北野天満宮社務所 |
アクセス | 嵐電「北野白梅町」より徒歩5分 |
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おわりに
京都の桜はソメイヨシノだけではありません。
ソメイヨシノが散ってから見頃を迎える桜もたくさんあります。
北野天満宮の北野桜が知られるようになったのは、2016年からです。
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